交通事故

股関節可動域制限等併合7級による裁判上和解が成立した事案

ご相談内容
店舗駐車場内を歩いていたMさんは,運転手が操作を誤って前進させてしまった自動車に衝突されて,その自動車と駐車車両との間に挟まれてしまいました。

Mさんは,本件交通事故により,骨盤骨折等多数のけがを負い,複数回の手術と長期間の入院を余儀なくされたため,今後の対応に不安を感じられて,当事務所に来所されました。

その後,Mさんは,股関節について人工関節置換術を受け,関節可動域が2分の1以下となった状態で症状固定となったことから自賠責保険金の請求を行いました。
しかし,自賠責は股関節の可動域制限は考慮せずに人工関節置換のみを認めて10級11号と認定して,ほかの障害とあわせて併合9級と認定しました。
これに対して,人工関節置換後の可動域制限も認めるべきであるとして異議申立を行い,併合7級の認定を求めましたが,等級は変更されませんでした。

そのため,私たちは訴訟を提起し,人工関節置換後の股関節の可動域制限について8級7号,そのほかの障害とあわせて併合7級に該当することを主張し,併合7級による損害賠償を求めました。
その結果,裁判官より当事務所の弁護士の主張どおり,併合7級による和解提案が提示されたため,裁判上の和解が成立しました。
解決方法
裁判では多数の争点がありましたが,主な争点は,Mさんの後遺障害の重さがどの程度であるか,それによって失われる労働能力がどの程度であるかの2点でした。
自賠責の等級より重い後遺障害の存在を主張
Mさんは,左股関節の人工関節置換術を受け,その後リハビリを続けましたが,左股関節の可動域は,健康な右股関節と比較して,2分の1以下までしか回復しませんでした。

このような場合,自賠責の後遺障害等級の認定基準では,「人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち,その可動域が健側の可動域角度の1/2以下に制限されているもの」に該当し「関節の用を廃したもの」にあたり,「1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの」として8級7号に該当するとされています。

しかし,このように認定基準が定められているにもかかわらず,自賠責は,人工関節の機能により関節可動域は回復するはずだから2分の1以下になるはずはないなどという理由で,人工関節置換による10級11号しか認定しませんでした。

そこで,私たちは,本件では人工関節が設計どおり機能していること,それでもなお可動域が2分の1以下であることなどの証拠を用意して自賠責の異議申立を行いましたが,それでも自賠責の認定結果は覆りませんでした。

そのため,Mさんの了解を得て,後遺障害等級について改めて裁判所の判断を受けるために,左股関節の後遺障害が8級7号に該当し,他の後遺障害とあわせて併合7級になると主張して,裁判を起こしました。

裁判では,被害者の後遺障害等級について争いとなりましたが,私たちが,医療機関のカルテから可動域の推移や治療の経過を主張立証し,主治医と面談して医師の医学的な見解を確認し,医師意見書を提出して,可動域制限が発生した原因について詳細に主張立証するとともに,本件交通事故の受傷が重度であったことからすれば可動域制限が残存するのは自然であることを立証しました。

その結果,裁判所からの和解案提示においては,Mさんの後遺障害等級について,当方の主張どおり併合7級とされ,そのままの内容で裁判上和解が成立しました。
後遺障害による労働能力喪失を立証
裁判では,後遺障害等級そのものが争われましたが,それに加えて,Mさんがが後遺障害によって,働く力(労働能力)をどの程度失うことになるのかについても争いになりました。

そこで,私たちは,それまでのMさんの業務内容を裁判で説明し,外回りの仕事が必須となること,股関節の可動域制限 により松葉杖なしの歩行は困難であり長距離の移動はできないこと,他の後遺障害の症状のために服用しなければならない薬の副作用などにより,仕事に支障が生じることなどを主張しました。

その結果,裁判所からの和解案提示においては,私たちが主張するとおりの労働能力喪失率が示され,そのままの内容で和解することができました。
弁護士より一言
自賠責が行った後遺障害等級の認定を,後から裁判で覆すのは,非常に困難なケースが多いといえます。しかし,本件では,私たちが診断書や診療記録などの資料を確認したところ,自賠責の認定理由に不合理があり,等級そのものを争うべき事案でした。裁判においても,主治医の協力も得ることができ,医学的見地からより重い後遺障害等級を主張立証することができました。さらに後遺障害によって失われる労働能力についても,具体的な事情を詳しく主張立証し,適正な損害賠償を得ることができました。

自賠責が認定する後遺障害等級が適正であるかどうか,労働能力が後遺障害によって失われたことを説明するためにはどうすればよいかなどの判断は難しいことが多いですので,お悩みの際には,早期にご相談を頂ければと思います。

山本 直樹

弁護士:山本直樹