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2020.08.11

京都スタジアム整備とネーミングライツ

Jリーグ「京都サンガ」を応援しています。

個人的な趣味の話題で恐縮ですが、サッカー観戦が趣味で、Jリーグの京都サンガFC(以下「京都サンガ」といいます)を応援しています。私は数年前からファンクラブに加入し、年に数回はホームスタジアムで生観戦、それ以外の試合もネット配信される動画で観戦してきました。プロ野球と異なり、Jリーグの試合は原則として週1回だけですので、全ての試合をチェックしたとしても幸いにして仕事への悪影響はなく、良い気分転換になっています。
今年は、新型コロナウイルス感染予防のため、開幕戦後にリーグ戦が一時中断していましたが、6月28日に、1月に完成した新スタジアム「サンガスタジアムbyKYOCERA」で待望のホーム開幕戦(無観客)があり、J1昇格のライバルと目されるジュビロ磐田を、2-0で破って今期初勝利を挙げてくれました。

「西京極スタジアム」と「サンガスタジアムbyKYOCERA」

先シーズンまで京都サンガのホームゲームは、京都市内にある「西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場」(以下「西京極スタジアム」といいます)で開催されていました。このスタジアムは、阪急「西京極」駅から徒歩数分という交通アクセスが魅力なのですが、文字通り陸上競技場を兼ねています。

しかし、陸上競技場を兼ねるということは、陸上トラックがある分だけ、観客席からサッカーの試合が行われるピッチまでの距離が遠く、球技専用のスタジアムと比べると臨場感や迫力に欠ける面が否めませんでした。また、ほとんどの観客席に屋根がついていないため、悪天候時にはどうしても試合観戦がためらわれることもありました。

そんな中、京都府は新たに、京都府亀岡市内に「京都府立京都スタジアム(仮称)」の整備を進めていました。このスタジアムは、サッカー以外にも利用できる専用球技場で、2020年シーズン以降は「西京極スタジアム」に代わる京都サンガの新たなホームスタジアムとなることが決まっていました。

チームカラーの紫色で統一された観客席は屋根に覆われるようになっており、天候を気にせずに観戦することができるほか、JR「亀岡」駅から徒歩数分と、公共交通機関を利用したアクセスも良好です。

通いなれた「西京極スタジアム」にも思い出や愛着はあったのですが、応援しているチームが新設のホームにできたということは、ファンサポーターとしても非常に嬉しいことで、J1に復帰できるよう、チームの応援にも力を入れていきたいところです。

 

ネーミングライツ

ところで、募集されていた京都スタジアムのネーミングライツパートナーは、京セラ株式会社が交渉権者となり、「サンガスタジアムby Kyocera」が新スタジアムの名称となりました。

この「ネーミングライツ」は「命名権」と和訳で呼ばれることもありますが、例えば京都市のホームページでは「本市の施設、イベント等について、その全部又は一部に通称を命名する権利」と定義されています。

命名権を販売する側の施設の所有者・管理者にとっては貴重な収入源になりますし、購入する側の企業にとっては、通称に企業や商品名を付すことで宣伝・広告効果が見込めるというメリットがあります。

アメリカで1990年代から普及し始め、日本でも2000年代から公共施設の建設や運営維持の資金調達方法として導入されることが多くなりました。現在は、スポーツニュースで耳にする球場・スタジアムだけでなく、文化施設などでも利用されているようです。公共施設に民間の企業名等が付されることによるイメージの問題や、契約期間又は企業の不祥事等によって名称が変更されてしまうといった懸念など、いくつか問題点はあるようですが、公共施設を維持管理するにあたって、税金以外の有力な資金調達方法であることは確かで、今後も拡大が見込まれる手法といえそうです。また、ネーミングライツというと大規模施設のことばかり連想してしまいますが、京都市の例を借りれば、ドッグランや公衆トイレといった小規模な施設にも導入されているようです。

ネーミングライツの取得を検討する企業にとっては、権利を購入する対価に見合った広告・宣伝効果が得られるかが、重要なポイントになるはずです。しかし、自治体がネーミングライツを募集する場合、様々な制限が設けられていることもありますので、費用対効果を具体的に検討するためには、募集要項の内容に十分目を通す必要がありそうです。

おわりに
ネーミングライツに関しては、実際にどのような名称をつけるかで企業側のセンスが問われる面があるようにも思います。企業としては広告・宣伝目的の投資になるわけですから、一般には企業名や商品名を強調することになります。
しかし、「京都スタジアム」の場合は、企業名は含まれているものの「サンガスタジアム」と京都サンガのホームスタジアムであることが前面に押し出されています。私が知る限り、このようにスポーツ施設におけるネーミングライツで、企業名等よりもホームチームの名前が強調される例は珍しく、そのせいもあってか、京都サンガのファンサポーターの中ではこの名称はかなり好意的に受け止められているようです。
今後、名称が広く京都府民にも定着すれば、このような控えめな(?)姿勢が結果的には企業のイメージアップにも繋がるかもしれません。
スタジアムの知名度や露出を高めるという意味でも、京都サンガにはぜひともJ1昇格を果たしてほしいところです。

なお、「西京極スタジアム」にもネーミングライツが導入され、2019年8月1日から「たけびしスタジアム京都」という通称に変更されています。

著者情報

加藤 誠実(かとう まさみ)弁護士

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