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2023.12.04

コラム(弁護士山本直樹) 被害者参加制度(2)

今回からは,刑事裁判における被害者参加手続を,実際の流れに沿って説明していきます。
 
1 被害者参加の判断を行う時期
 被害者参加制度の対象事件が起訴されたときには,刑事裁判の被害者参加を行うかどうかを決める必要があります。
 このようなときには,事件を担当する検察官から,被害者参加の意向について尋ねられることが多いと思います。
 裁判の途中から被害者参加することも可能ですが,被害者参加の有無は裁判の進行に影響しますし,被害者である被害者参加人も準備の時間を確保しておくべきですので,早めに方針を決めた方がよいでしょう。
 弁護士に相談される場合にも,検察官による被害者の意向確認の時点,またはそれ以前にご相談をいただくと,その後の手続をスムーズに進めることができると思います。
 私が経験した事件では,第1回公判期日の直前にご相談いただいて,そのまま被害者参加となった事例もありましたが,このような場合はどうしても準備や検討の時間が短くなってしまいますので,早めのご相談をお勧めします。
 
2 被害者参加するべきかどうか
 前回の記事でも触れたように,被害者参加制度を利用することによって,被害者は,刑事裁判に参加して一定の訴訟手続に加わることが可能となりますし,そのほかにも,参手続を実施していく中で,裁判そのものの内容や今後の見通しなどをより深く知ることができます。
 他方で,公判への出席には,裁判所までの移動を含む時間的な拘束などの負担が存在しますし,参加手続にあたって一定の準備作業が必要となることも多いため,このような負担を検討しつつ,被害者参加するか否かを判断することになります。
 公判期日は平日の日中に行われますので,出席したくても出席できないという場合や,精神的な負担から出席したくないという場合もありますが,弁護士が被害者の代わりに出廷することにより対応することもできますので,そのような場合は弁護士への依頼をご検討ください。
 
3 被害者参加の許可
 担当検察官に被害者参加したい旨を伝えると(正確には,被害者参加の「申出」となります),検察官が,裁判所に対して,意見を付けて通知しますので(刑事訴訟法316条の33第2項),これを受け手裁判所が被害者参加の可否を検討し,被害者参加の許可を行います(刑事訴訟法316条の33第1項)。
 このときに裁判所から受け取る通知書は,国選被害者参加弁護士の制度を利用する場合には必要となりますので,なくさないように保管しましょう。
 また,この時点で被害者参加人となりますので,一定の要件をみたせば,国選被害者参加弁護士の選任の手続をとることも可能です。
 現在のところ(令和5年12月1日時点),それまで相談していた弁護士を国選被害者参加弁護士に選任してもらうように求めることもできるようになっていますので,国選での弁護士選任を希望する場合も,弁護士に相談される方がスムーズです。
 
4 事件記録の閲覧と謄写
 被害者参加の許可を受けた時点では,刑事裁判についてほとんど資料がない状態ですので,まずは,刑事裁判において提出される予定の証拠について,閲覧や謄写を行うことになります。
 また,検察官を通じて検察官請求予定証拠に対する弁護人の意見を確認したり,期日の進行について検察官と打合せしたりするなどして,刑事裁判の進行の見通しを立てます。
 これらの情報から,検察官はどのような事実を立証しようとしているのか,どの事実が争いとなって,どのような反論が行われるのかなどが推測できますし,そのような双方の主張の見込みから,今後の訴訟がどの程度の日数を要するか,どのような順番で,どの手続が行われるかなどを考えることになります。
 ここで進行の見通しを立てた後は,それに基づいて,被害者参加人が可能な手続のうち,どの手続を行うか,その内容をどうするかなど,準備を進めていくことになります。
 
5 実際の打合せについて
 私が被害者参加弁護士として経験した事件では,この時点で謄写した記録をもとに,依頼者と打合せをして,弁護士として予測する事件の見通しを説明し,どの手続を行うか検討しています。
 この時点の刑事記録は,事案簡明な案件であれば,紙ファイル1冊分で収まりますが,複雑な案件や争いのある案件であれば,分厚めの紙ファイルでも5~6冊を超える分量になりますし,内容が複雑であれば記録を何度か読み返す必要も出てきますから,見通しを立てる作業に時間がかかることもあります。
 打合せでは,検察官請求予定証拠がどのような事実を証明しようとするものなのか,それに対する弁護人の意見はどのような意味なのか,それによって裁判手続にどのような影響が出るのかなど,刑事裁判を経験されていない一般の方には非常に分かりにくい部分について,詳しく説明するようにしています。
 また,被害者について証人尋問が予定されている場合などは,先に証拠の内容を読んでしまうと,本来の証言が変化してしまうなどの問題が発生してしまうため,打合せの方法を工夫する必要があります。
 そのほかにも,謄写した記録については,使用や保管に厳しい制限があるため,被害者本人であってもコピーを交付することは難しいので,事務所にお越しいただいて,一緒に記録を見ながら打合せを行うようにしています。
 
次回も引き続き,被害者参加手続の準備について説明します。

著者情報

山本 直樹(やまもと なおき)弁護士

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